判例研究する理由

小職が所属する東京弁護士会の中に労働法制特別委員会というところがありまして、一部会として判例研究部会というのがあります。

名のとおり裁判例(特に最新)を研究するわけです。

なぜ法律家は裁判例を研究するかというと、たぶん裁判官の判断の背後には普遍的な判断基準とか真理があると信じていてその形を発見したいからだと思います。生命と非生命の境目がどこにあるのか生命のDNAの本質が何か探し当てたいというのと似た感じで、法律家はあらゆる争いを解決できる基準、常識って何ということを突き止めようとしています。自然科学と違うのは人を相手にしますので場所や時代によってそれは変遷するのだろうと思います。

 

理系だと仮説の正しさを確認する作業として実験をしますが、法律家の場合は普通ありもしない事例についてじゃあこんな場合ではどうかなどと議論します。

例えば刑事法の教科書に出てくる議論だと殺したと思ったら実は死んでいなくて死体を人知れず葬るつもりで砂浜に埋めたら砂を吸って死んだが何罪かなどとやります。

そんなわけで、法律家は難しい議論をするようになります。優れた人はそれを市民のために翻訳します。ご安心してお付き合いください。